台風19号では、いくつかの自治体で公式ホームページへのアクセス障害が発生した。
昨年、似たような事案を発生させてしまった身としては、少し整理しておきたい。

1 背景
○ いくつかの災害(特に広島の土砂災害)を経て、各自治体がかなり早めに、かつ広範囲に、避難に掛かる情報を出すようになっている。たくさん避難情報を出せば、その分、問題の発生は増える。それも含めて「空振りを恐れない」ではある。
○ 緊急速報メールの普及が進んでいる。これは2つの面があり、ひとつは対応機種を持っている人が増えた、ということと、もうひとつは、各自治体で発信の各社との発信の契約や発信システムの整備が進んだ、ということ。
○ 各自治体での緊急速報メールの対応が進んだ理由は、効果の割に経費が安いこと、が大きい。他のプッシュ型のメディア(防災無線、広報車等)は、いずれも効果的に運用するためには、何百万~億の単位の年間維持費が掛かる。一方、緊急速報メールはとりあえず回線1本用意できれば、運用できるので、年間の維持費は最低0円~(既に他の用途で使用しているものがある場合・・・普通あるし)。
○ 結果的に、アクセス障害が話題となるのは、比較的被害が少なかった地域。被害が大きければ、当然被害そのものが話題となるし、被害を抑制するために自治体のホームページがあるとはいえ、それで直接防げる被害はそれ程多くない。というのも、台風の場合、テレビ、ネット他で危なさ加減はそれなりに周知されているので、市のホームページが閲覧できないことが決定的に被害の発生に対して重要な場合、というのは想像しにくい。(もちろん、だからやらなくていい、ではないし、台風以外ではまた事情が異なることもある。)

2 アクセス障害の原因
○ うちの場合は回線だった(役所でもフレッツを使っているところは多い)。サーバはかなり余裕があった。
○ 他のところは、分からない。回線の場合が多いのでは、と推定するが、サーバが貧弱な場合もあるだろうし、結構、ファイヤウォールがしょぼい、といったケースもありそう。
○ コンテンツ構造も課題があり、軽いページを用意すると、「もっと色々な情報を載せろ」「地味」とか言われる。手動である程度、作り込むことはできるが、すると属人的な対応に偏り、防災的には望ましくない。「軽く」「必要な情報を状況に合わせて」「見栄えよく」「自動的に」表示させるのは不可能なので、しばしば「軽く」が軽視されがち(他のことは平常時でも問題になりやすい)。

3 対策と今後の課題など
○ 基本に忠実に、回線を太くし、サーバを増強し(クラウド化も視野に入れつつ)、ファイヤーウォールをいいものに換え、軽いサイト構造に改め・・・、といったことを予算や効果と相談しながら淡々と進めるのがシステム担当(いれば)の役割だろう。
○ 一方、そもそもホームページに来させない、というのも大事で、耐性という意味では通信<放送なのだから、テレビに頑張ってほしいところ。災害の啓発では「NHKつけてdボタン」は毎回言っている(Eテレじゃないよ)。こういうときのための受信料。
○ ただ、テレビでも軽いサイトでも、文字データになるので、それだけで十分か、地図を見せなくていいか、という課題は残る。横浜市くらいだったら、災害危険箇所のポリゴンデータも公開して、民間利用させる(そちらにアクセスさせる)こともできるだろうが、他の自治体だったら、そうしたオープンデータの枠組みからつくらなければならないので、道は遠い(しなくていい、ではない)。

防災ラジオを配布するより、見守り系の携帯電話を配ったほうが、防災上は安上がりで効果が高い。見守りケータイは緊急速報メールを受けられるし、日常的に身につけておくことも可能。
月々の負担を自己負担していただかなければならないこと、ケータイという大抵の人が私費で購入するものに対して公費を投入することがどうか、という点が課題。公的には安上がりな方法が採用されるとは限らず、公正性のために敢えてコストを掛けるということはよくある。